◇ カレーなる世界 ◇



えぞ鹿カレー
 鹿肉に関しては以前焼肉として食べたことはあるのだけど、むしろ美味しかったし、脂肪分が少なめの、ヘルシーな肉、という感じがする。
 そんな肉なのだから、カレーに入っても大丈夫だろう、という気持ちで一口食べる。

 ……ん。
 カレー自体は特別辛いというワケではないのだけど、鹿肉が原因だろうか。なんだか妙に痛んだレバーのような臭みがあって、食欲を減退させられる。
 あかり姉さん曰く「犬の口の中の臭い」だそうだ。おいらの感じではドブ臭いというか。
 カレールー自体はボンカレーの辛口のような感じで、特に問題はなさそう。
 ここにきてエイボンさん、みょ〜さんもちょっと顔をしかめたりして「これは不味い」と言うような表情になってきた。
 鹿肉の味がなんだかレバーっぽいと言うか、とても癖がある味で、これはちょっと好き嫌いがありそう。

口直しのカレー
 最後に残ったのはトドカレー。
 これも海の哺乳類ということだから、もしかしたらアザラシのように危険な味になっているのかもしれない。
 そんな恐怖を心の中に潜めつつも、タマちゃんのようにドブ川で泳いでいないんだし、大丈夫だろうと思って缶を開ける。

 アザラシ以上のドブ臭さが部屋中に充満。
 これは汚水処理場の臭いというか、腐敗臭と言うか。
 今からこれを食べるのか……と思うと絶望な気持ちになってくる。
 とりあえず鍋で温めてゆくと……このドブ臭い腐敗臭に加えて何やら刺激臭も。
 アンモニアか!? と一瞬思ったがそれか、もしくはそれに近いものだろう。
 はたして今温めているモノは本当にカレーなのか、それとも別の何かなのか。そんなことを思いながらカレーを温める。

 そして、全員の皿にカレーが盛られたワケだが、全員カレーを見て絶句。
 毒々しい色、そして腐敗臭。
 もはやカレーではないなにかを食べるかのようなそんな気持ちで全員が見つめ合う。
 とりあえず1口食べてみると……

 一応カレーの味はする。
 でも、カレーの臭い以上にキツいドブ臭い香りが全員の食欲を削ぎ、そして精神を衰弱させてゆく。
 特に、アザラシの肉が強烈だ。
 臭いだけではなく、なんとなく酸味がある。もしかしてアンモニアか何かなのだろうか。
 まさに食の最終兵器を前に、さすがのエイボンさんも玉砕。全員が黙りこくる事態になった。

 何というか、これは

口直しのカレー
 熊カレー、アザラシカレーを食べたところで一旦休憩。
 理由は、一旦鍋を洗いなおすという理由が主だけれども、実際にはアザラシカレーがあまりにも衝撃的な1品だったことによる衝撃が忘れられないからだ。
 この、あまりにも衝撃的な味は今後の評価にも影響を与えかねない
 その口直しも兼ねて、ちょっと一休み。

 余ったカレーをビニール袋に詰めて、袋を縛る。
 同時に、鍋も一旦綺麗に洗ってしまった。
 そして、冬の寒い時期にもかかわらず窓を全開にして空気の入れ替え。
 もはやギブアップでした。




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